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[2021年02月17日 02時00分]

茨城県美浦村と滋賀県栗東市にある日本中央競馬会(JRA)のトレーニングセンターで働く多数の調教助手や厩務(きゅうむ)員らが、新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を不正受給した疑いがあることが16日、関係者への取材で分かった。

担当馬がレースで獲得した賞金に応じて得られる報酬が新型コロナの影響で減少したとして申請していたが、日本調教師会は「中央競馬の中止はなく影響はほぼなかった」と返還を求めている。JRAによると、昨年の実施レース回数は過去最多だった。

大阪市の男性税理士が指南していた。「受給者は100人以上」と証言する調教助手もおり、総額1億円以上になる可能性もある。男性税理士は取材に「コロナの影響を受けたかどうかは申請者本人の申告に基づいている。不適切な申請はしていない」と主張。中小企業庁は「個別の事案には答えられない」とした。

この税理士の法人は昨年春、過去に税務処理を請け負った調教助手らに「原則として皆さまが給付対象」「申請をサポートする」などと記した文書を送付。成功報酬は受給額の7~10%とし、紹介も受け付けていた。

給付金の支給は、申請者が昨年1月以降で任意の月を選び、前年同月比で収入が半減していることが要件。税理士法人の文書は「申請月の検討が最も重要」と強調し、調教助手らは報酬の差が大きい月を選んでいた。

日本調教師会は昨年11月、調教助手らを雇う調教師に通達を出し「コロナによる経済的な影響はほぼ皆無」とし、不適切に受給した場合は返還するよう求めた。

調教助手らは給与のほか、担当馬がレースで獲得した賞金の一部を「進上金」として受け取り、確定申告している。ある男性調教助手は「コロナに関係なくレースの勝ち負けによって月々の進上金は大きく増減する。給与だけでも平均的な会社員より稼いでおり、私たちがもらって良い給付金ではない」と話した。(共同)

▽JRAのコメント ご指摘の報道(厩務員らが持続化給付金を受給していること)については承知していない。厩務員を雇用している調教師(一般社団法人日本調教師会)らと協議し、事実関係の確認に努めたい。

▽中央大法科大学院の酒井克彦教授(租税法)の話 持続化給付金の受給要件にあいまいさがあることが露呈したと言わざるを得ない。ただ新型コロナウイルスによる間接的、潜在的な影響は業界ごとにさまざまで、行政側が受給の正当性を判断することは難しいだろう。事情を熟知している業界団体は、自主規制するなど主導的な役割を担う必要があった。業界団体が返還するよう求めた場合は、申請者や指南した税理士は真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。

◆持続化給付金 新型コロナウイルス感染拡大で売り上げなどに特に大きな影響を受けた事業者の事業継続、救済のための国の給付金。最大で法人は200万円、個人は100万円。申請受け付けは昨年5月に始まり、今月15日に終了。約421万件、約5兆5000億円が支払われた。支給のスピードを重視した結果、審査が甘くなり、本来資格のない事業者による不正受給が相次いだ。