2018年の4月に「ダイオライト記念と黒船賞」という記事で、「呼び込みで頭数だけ揃えても、魅力あるレースは作れない」と書いた。今年のかしわ記念は遂に頭数すら揃えられなくなったかとガッカリ。前日のオープンに昨年の道営三冠馬を含む重賞ウィナー6頭が出走、地方馬の出走は大井のナンヨーオボロヅキ(高知二冠馬)1頭。

結果はご存知の通り1着ワイドファラオ→2着ケイティブレイブ→3着サンライズノヴァと波乱の決着、人気のモズアスコットとルヴァンスレーヴは共倒れで馬群に沈んだ。大井のナンヨーオボロヅキは3コーナーまでは馬群に付いていたが、直線はみるみる離されてブービーから3秒5差のシンガリ。

船橋千六は盛岡と並ぶ数少ないワンターンのマイル戦、ツーターンの千四と比べるとJRA勢が走りやすいのは確か。それでも長距離戦は走れば走るほど実力差が出てしまうが、マイルまでの距離なら「紛れ」と言ってはなんだが「逆転の余地」は残る。これまでのかしわ記念でも、地方トップクラスの馬なら善戦以上の場面も度々。

昨年はキタサンミカヅキが2頭のJRA勢に先着して5着、2015年のハッピースプリント(3着)→2016年のソルテ(2着)と2年連続で地方馬が馬券になったのも記憶に新しい。古い話になるけれど2009年から2012年までフリオーソが5着→2着→1着→2着、キタサンミカヅキもフリオーソもベストとは言えない距離で頑張っていた。

2013年・2014年・2017年・2018年はJRA勢に先着した地方馬がおらず、特に2014年は今年と酷似した状況だった。8頭立てで地方馬は船橋からコンノートとケイアイサンダー、笠松からタッチデュールの計3頭。コパノリッキーが勝ったレースで、地方馬最先着はタッチデュールで5着アドマイヤロイヤルから2秒2の大差がついた。

フリオーソの川島正行師は他にアジュディミツオーでもこのレースを制しているし、キタサンミカヅキの佐藤賢二師はG1昇格前にトーシンブリザードで2002年に優勝・2004年に2着。ともに鬼籍に入ったのが残念でならないが、川島正行師や佐藤賢二師と言ったチャレンジングスピリットに溢れた陣営とスターホースの出現が待たれる。

自身の息子もJRAで調教師をやっているから、調教師の名誉のために言うならこれは調教師の責任では全くない。前日のオープン・皐月盃の優勝賞金は500万円、かしわ記念は5着に頑張っても300万円。オープン馬を擁する陣営のレース選択には、オーナーに配慮した経済的合理性がある。

JRAで桜花賞に出られない馬がオークスに向かって忘れな草賞を使うように、割り当てられた出走枠に入り切れないほど申し込みがあるなら救済策としてオープンを組むのも魅力あるレース作りに資する。馬券の売り上げが原資になって賞金が出る日本のシステムにおいては、番組編成はファンの目線を忘れてはいけない。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
http://bit.ly/17MDXV7

◇競馬通信社◇
http://ktsn.jp