ハンデを「読む」楽しみ◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】

2月2日のシルクロードSはアウィルアウェイに本命を打って的中、JRAのハンデキャッパーの優秀さを再認識した。「重賞未勝利の4歳牝馬に55キロ、葵Sで差がなかったディアンドル・ディープダイバー・エイティーンガールとの比較で不利にも映るが、目利きのハンデキャッパーにも力を認められた証左。」と予想記事に書いた。

2月8日の回顧記事には「重賞未勝利の4歳牝馬に55キロ、セックスアローワンスを考えればトップハンデに相当。」と書いたけれど、正確にはセイウンコウセイの58キロがトップハンデ。しかし牡馬なら57キロに相当する斤量だけに、G1馬のセイウンコウセイとの比較からも「不利なのでは?」という疑念もあったはず。

実際に陣営からはレース前に「55キロは少し重かった気がしますが、それを打ち破って、何とかいい結果を。」とハンデを見込まれたという趣旨のコメントが出ている。重賞馬のディアンドルと同斤、牡馬でオープン勝ちのあるディープダイバーより1キロ重いのだから不満のひとつも言いたくなるのもわかる。

結果は見ての通り、「外に出し切ってから加速させながら、これなら届くと思いました。ハンデが見込まれたと思われるなか、しっかりと勝ち切ってくれました。」と川田騎手。着差もクビ+クビ+3/4+ハナと、掲示板に載った5頭が約1馬身(0秒2)に犇いていた。ハンデキャッパーの読み通り、横一線の好レース。

かつてダートの重賞が千六のフェブラリーハンデと二三のウィンターSしかなかった頃は、アンドレアモンの62キロ・ダイナレターの61.5キロ・ナリタハヤブサの61キロ・ミスタートウジンの60キロなど重ハンデが見られた。重賞でこれだから、オープン特別では別定・ハンデを問わず60キロ越えは日常の風景だった。

重ハンデを課せられるのは実力の証、レースでも目玉となる馬であることが多い。陣営だってなるべく馬の負担を軽くしたいわけで、ハンデ発表までにJRAに心理戦を仕掛ける調教師もいた。「60キロまでなら出るけど60.5キロ以上なら出ない。」と、具体的な数字を示す場合さえあった。

トップハンデを基準に以下の斤量が決まるわけで、ここを軽くすると全体に大きな影響が出る。JRAだってやすやすと斤量を軽くできるわけでもなく、しかし番組の充実を考えるなら目玉となる馬には出てほしい。ハンデキャッパーたちは苦心を重ねてハンデを決めているわけで、小数点以下の500グラムにその苦心を見出したりもする。

かつてG1馬を登録して上記の心理戦を仕掛けて、まんまとトップハンデを少し軽くさせてその馬を回避させた陣営もあった。なんでそんな回りくどいことをしたかというと、真の狙いはもう一頭登録した馬の斤量を抑えること。つまりトップハンデが軽くなれば、その下の斤量も軽くなるのを利用したのだ。ハンデ戦は読みがいがある。

◆竹内康光【馬よ草原に向かって嘶け】
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