ノーベル平和賞授賞式、被爆者が初めて演説



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2017年12月10日 22時41分 読売新聞



 【オスロ=笹沢教一】今年のノーベル平和賞の授賞式が10日、ノルウェーのオスロ市庁舎で行われ、受賞者の民間団体「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」を代表して、ベアトリス・フィン事務局長(35)とカナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(85)が登壇し、演説した。

 被爆者が授賞式で演説したのはノーベル賞史上初めて。サーローさんの演説後、出席者全員が立ちあがり、スタンディング・オベーションの拍手でたたえた。演説中、10秒以上にわたる拍手が何度もわき起こり、涙ぐむ出席者も少なくなかった。

 ICANの活動に協力してきたサーローさんは、13歳の時に広島で被爆したときの犠牲者の悲惨な状況を克明に語り、「私たち被爆者は、この苦しみと、生きのびて灰の中から立ち直ろうとする闘いを通じて、この世に終わりをもたらす核兵器について世界に警告しなければと確信した」と訴えた。

 ICANが実現を国際社会に働きかけ、平和賞の受賞理由にもなった「核兵器禁止条約」は、核保有国や核の傘の恩恵を受ける日本などが参加しない方針だ。サーローさんは「核兵器は必要悪ではなく絶対悪」と核保有国に呼びかけ、すべての国の条約への参加を求めた。

 フィン事務局長は「核兵器使用の危険は、冷戦時より高まっている。当時より核武装国が増え、テロやサイバー攻撃によるリスクもある」と警告。米英仏露中に加え、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の計9か国を名指しして核放棄を迫った。

 米英仏露は今回、慣例に反して、授賞式に在ノルウェー大使を出席させず、大使に次ぐ地位の外交官の代理出席などの対応を取っている。印パは不在を理由に大使が出席せず、中国は民主活動家の劉暁波リウシャオボー氏が10年に平和賞を受賞して以来、出席していない。北朝鮮にはノルウェー大使館がない。