須田鷹雄さん、ありがとう☆種牡馬の勢力図は変わるか◆須田鷹雄【野次ウマ競馬】

 種牡馬展示のシーズンだが、あいにく仕事で東京にはり付けられており、どの種馬場にも行けなかった。代わりに、送られてきた今年の種牡馬録を眺めている。
 私が中高生だった昭和の終わり頃、競馬四季報の最後のほうには種牡馬の広告がずらりと並んでいた。いまのように大手種馬場に種牡馬が集約されているだけでなく、大手かそれに近い牧場には必ず種牡馬がいたものであり、いわゆる「マイナー種牡馬」がわんさか存在したものである。

 ところが、この20年は勝ち組種牡馬と負け組種牡馬の差が開き、数年で種牡馬を続けられなくなる馬も増えた。その理由を理解していない競馬ファンも多いように見えるが、最大の原因は1頭あたりの種付け頭数が増え、一方で生産頭数は減ったことである。
 昔は100頭付けたといったら驚いたものだが、獣医技術が進んで200頭でも付けられるようになった。こうなると人気のある種牡馬に殺到するのは当然で、一方で価格の高騰は避けられている。ディープインパクトだけは別格だが、種牡馬ルーキーだったミスターシービーが2000万円、というようなことは今は起こりえない。
 ただマイナー種牡馬側からすると「付ける数は少ない、単価は安い」ということになるわけで、一度流行から外れると苦しい状況になる。

 それでもここへ来て、多少潮目が変わってきているようにも感じる。ひとつはスクリーンヒーロという象徴的な成功例が現れたことだ。規模は違うが、その前にはローエングリンなども意地を見せた例である。
 もうひとつは、仕事としてではなく趣味として馬主をやっている人々が、繁殖牝馬を所有・預託しているケースが増えつつあることだ。正確に統計をとれるものではないが、私の周囲でも上がり馬をそのまま繁殖で持つケースが増えてきた。
 売る用途でなく使う用途なら、種付料が安くて配合的に良い種牡馬を選ぶことになる。このあたりのニーズをうまく誘導していけば、種牡馬の勢力図も多少は動くのではないかと思う。

 種牡馬が廃用になってしまうと、余生の問題も発生する。より多くの種牡馬が、自分の食い扶持だけでも稼げるような状況になると、ファンにとっても安心できることだろう。

◆須田鷹雄【野次ウマ競馬】
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