「安倍さんがキムさんになる」首相のおひざ元で政権批判 会場は大盛況



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(AERA 2015年9月21日号掲載) 2015年9月14日(月)配信



 吠える憲法学者に万雷の拍手が送られた。安倍晋三首相の地元・山口で開かれた小林節氏の講演会。会場は立ち見も出る大盛況だった。

 アウェーでもやっぱり、この人は怒っていた。

「歴代の自民党政権が積み上げてきた憲法解釈を否定するならば、ふさわしい論拠を持ってこい。論拠がないなら、まずは憲法を改正しろ。いま、どちらも行われずに、立憲主義のルールを無視しようとしているから、安倍政権に怒っているんです」

 壇上から聴衆に語りかけたのは、憲法学が専門の小林節・慶應義塾大学名誉教授。間髪入れずに、こうたたみかけた。

「だってね、憲法は、主権者である国民が権力者に与えた約束なんです。それを権力者が無視するということは、安倍さんが安倍さんじゃなくなって、キムさんになることなんです」

 会場に広がったのはブーイング、ではなく拍手だった。話が国会で審議中の安保法案の具体論に及んでも、小林氏の語りは来場者の心をつかんで離さない。自衛隊の活動範囲が広がっても防衛予算は増えないとする安倍晋三首相の説明と、来年度の概算要求が上積みされていることの矛盾にかみついた。

「男なら、おじいさんみたいに筋を通してほしい。でなければ、お父さんみたいにもう少し寛容に人の話を聞いてほしい」

 おじいさんとは、戦前の翼賛選挙を非推薦で勝ち抜き、軍閥政治に挑んだ反骨の政治家・安倍寛(かん)氏。お父さんとは、戦後の自民党政治の最盛期に、党幹事長や外相を歴任した安倍晋太郎氏である。

9月5日、小林氏が講演を行った場所は、寛、晋太郎両氏が輩出した安倍首相のおひざ元、山口県長門市だった。 小林氏は6月、衆院憲法審査会で、安保法案は違憲だと主張して、国会審議の流れを変えた3人の憲法学者の一人。安倍氏にしてみれば、敵役である。参院での審議も終盤に差しかかった9月最初の週末、その小林氏が安倍氏のおひざ元で政権批判を繰り広げ、住民から大きな拍手で迎えられたのだ。

 後援会の関係者はこう話す。

「いかん。そんなことしてもろうちゃ困る。なんでここで、安倍さんの地元でやるんかと、みんなで話していました」

 3代にわたり安倍家を支えた地元に、きしみが生じた。

集まった市民たちは、いったいどんな問題意識を持っていたのか。大きな比重を占めたのは、安保法案への不安だ。

「詭弁とまで言ったらあれだが、都合のいい説明ばかりで、違うんじゃないのと感じることもある」(72歳男性)
「戦前に軍国主義がはびこったのも、長州出身者の役割が大きかったと思っている。そして今も山口出身者。恥だと思う。情けない」(下関市の44歳男性)

※AERA  2015年9月21日号より抜粋





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