◆沢田準【競馬を楽しく】
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トーセンの冠号馬名で有名な島川隆哉氏がついにこの冠号の使用を今年の2歳からやめてしまった。2歳馬名簿を見てもトーセンをつけられた馬が全くいなくなり寂しさを感じるほどである。

島川氏といえばセレクトセールにおける代表的な購買者で、何年もにわたり高額な馬を次々と落札している。

しかしトーセンの各馬の成績は残念ながらその高額な投資に見合ったものとは言えなかった。

そしてファンの間ではトーセンの冠号がその期待に反している理由ではないかとも言われたりしていたようだ。

島川氏にもこの意識があったのかもしれない。トーセンではこれ以上走らない。根拠は何もないが競馬とは勝負事であり、理屈を超えたものも必要なのかもしれない。

島川氏が冠号をやめたとなると今度注目されるのはサトノで知られる里見浩氏である。里見氏も島川氏と並んでセレクトセールの目玉的購買者だが、やはり馬の活躍は期待通りとは言えない。

2歳馬には2億3000万円というサトノダイヤモンドが出走を控えているが、この馬の成績次第ではやはり冠号をやめてしまうのではないかと、下種の勘繰りをしたくなるのである。

たしかに現在の最大のオーナーグループである社台関係など冠号を使わないオーナーも多くなっている。冠号は時代遅れという印象が強いのだろうか。

しかしかつてはほとんどの大手馬主は冠号馬名を使っていた。クリ、ハク、メジロ、オンワード、タニノ、トウショウ、シンボリ、サクラ、ニホンピロ等々。

社台グループにしても吉田善哉氏時代はシャダイ、社台レースホースはダイナだったのである。

冠号馬名は日本独特のものである。その利点は馬名だけで馬主がわかるということだ。馬主にしてみれば馬名だけで自分の馬とわかるのは便利だろう。

特に一口オーナーグループでは、その冠号の馬が多く出走すればそれだけで費用のいらない宣伝になる。マイネル、レッドなどその代表だ。

また冠号であれば馬名をつける手数が省かれる。現在では日本語だけではなく各外国から馬名を選ぶことは多くなったがそれにはいろいろ考えなくてはならないし、同じ馬名がないかを調べなくてはならない。

以前はあまり手をかけられなかった。冠号なら調べるのは自分の馬だけでいい。もっともこのためにそのかわり馬名の美しさ、面白さは失われた。

冠号馬名は、厳しく言えば競走馬の記号化である。昔なんとかオー、かんとかホマレばっかりと嘆いていた人がいたが、それが馬名に対しての日本文化だったのだろう。

ところで外国では使われない冠号馬名が日本で使われているのはなぜだろうか。それは日本では現役競走馬のマーケットが全く無いためと思われる。

外国ではクレーミングレースやセリングレースで、レースに使われている馬のセリは日常である。レースが終わると出走した馬のセリが行われる。従って馬主が変わるのは当たり前だ。このような世界では、馬主はどんどん変わるのだから冠号馬名など考えるはずもない。

しかし日本では中央から地方にトレードされる場合を除くと馬主が変わるのはまれだ。ほとんどの馬主は引退するまで持ち続ける。このような日本の特殊事情のため、諸外国とは異なり冠号馬名が多く使用されているのと思われる。

冠号の歴史上で字数が最も長かったのはリュウシンゲキだろう。龍進撃有限会社。

阪神牝馬特別などを勝ったケイリュウシンゲキがもっとも有名で他にもライリュウシンゲキ、コーリュウシンゲキ、スピリュウシンゲキ等がいたが、なにしろ9文字の内7文字が冠号だけに馬名を付ける上での余裕がなさすぎたのだろう、そのうちこの冠号はやめてしまったのだった。

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