第3札所:青富士とご対面◆石川ワタル「競馬お遍路さん」


驚くべきことはいつも突如として起きる。それは分かっていても、あまりに突然だった。バスの車窓からすっくと、今まで見たこともない富士山が現れた。まるで浮世絵のような、現実のものとは思えない神々しさ。

この5月6日、立夏の日の昼下がり。宮ノ下から箱根関所へ向かうバスの右手に、霊峰富士はなお雪を戴きながら、雪以外をすべて青く染めていたのである。

北斎の有名な「神奈川沖浪裏」の富士山は、サイズが小さいからよく見ないと気付かないが、あれは正に雪を戴いた青富士である。躍動する波の色と同じ「北斎ブルー」の深い青。その青富士を、ついに見ることができた。

青富士に点睛して雪残る(島村正)

画竜点睛の雪が、青富士の美しさを際立たせる。「青富士」は夏の季語だが、暦の上では、立夏の日から夏が始まる。この一句も今ごろの絶景を歌ったのだろう。

ただし、この句は青富士の雪がメイン。僕は「青」富士にドキッとさせられたが、上に雪がなければ、確かに点睛を欠いただろう。

「青富士にそんなにびっくりしましたか?」
週末、新宿ゴールデン街のなじみの店で語ったら、若い競馬好きに言われた。「ひょっとして、それって明日のNHKマイルが①④で決まるサインじゃないですか」

青富士は上が雪、下が青で、枠色なら確かに①④だ。縁起物を見て、きっと何かいいことが起きると思ったら、これだったのか。

あわてて①④を買い足した僕だったが…。そんなに競馬は甘くない。NHKマイルの枠連は青黄の④⑤だった。

「青だけは合ってた」と言ったら、家人いわく「青と黄色を混ぜたら緑でしょ。今の新緑がサインだったのよ」だって。

◆石川ワタル【競馬お遍路さん】
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