斎藤空也さん、労作をありがとう☆これからのドバイミーティングを考察する<その2>◆斉藤空也【22世紀の競馬を望む】

さて、今年のドバイミーティングは日本馬にとって厳しい結果を突き付けられたといえる。その部分も踏まえて、戦略分析をしていこう。まずは前提として、まず競馬通信当時のコラムでは、このレースへの挑戦メリットとして以下のような概略をあげていたことを置いておこう。

この時期は欧州勢、北米勢が共に完全な冬休み明けとなる。一方、日本馬はもともとこの時期に使いだす調整となることが多く調整の面で利がある。阪神大賞典、日経賞、大阪杯等のBIG・GⅡがあり、京都記念、中山記念の使い勝手も比較的良いからだ。ダート路線はもともとフェブラリーS、川崎記念があり、選考を兼ねたベスト時期のレースとなる。

このアドバンテージを活かせば、つけ入る隙を見つけたり、あるいは優位に競馬を運ぶことができると考えるべきではないか。左回りで直線の長いコースという点でも「芝」を睨んだ挑戦は、ジャパンカップや香港(12月、4月)とセットで検討していくべき事項だ。

こうした中で、これまで期待以上の成果を見せたといえるのがシーマクラシックだ。ステイゴールド(2001年・1着)、ハーツクライ(2006年・1着)、ブエナビスタ(2010年・2着)、ジェンティルドンナ(2013年・2着、2014年・1着)が結果を出してきた。

一方、日本の十八番と呼ばれるディスタンスで期待されたドバイターフ(旧デューティーフリー)ではアドマイヤムーン(2007年・1着)、ジャスタウェイ(2014年・1着)を別にすればウォッカが2度の敗退となる等、前評判ほどの結果が出ていないともいえる。

これまでの結果からはっきりとしている事は、シーマクラシックを狙って勝てる馬は、日本で5年に1頭か2頭育ってくる珠玉のクラスだけ(ステイゴールドのように海外でこそという馬の場合は、積極的に12月の香港でトライすると良い。無理に有馬記念に出ようとする必要はない)。

国内G2が一杯一杯の馬は遠征どころか登録する必要すらないステータスの高いレースであることは明白だ。帯同馬等の戦略的要素がないのであれば、予備登録すら必要がないと思う。日本競馬のステータスを考えた場合、これからはその段階に移行すべきだろう。

また、ドバイターフに関しては「1800m」という距離に惑わされてはいけないのではないかという仮説が検討できる。例えば、東京1600mの安田記念では中距離実績がものをいうことが今では広く知られるようになったが、同様にドバイターフでも日本馬に関しては2000m以上の実績が不可欠ではないかということだ。

勝ったのが2400mのジャパンカップでも勝ち負けになった2頭。一方でハットトリック、アサクサデンエン、ロゴタイプらのマイルに実績や適性を持つ馬達の負け方を対比してみたらどうだろうか。ドバイの1800mで最後に問われているのは中距離馬としてのスタミナや底力である可能性が高いと推測することは難しくないだろう。

日本では1800mというとマイルの馬が+200mの競馬で戦うことが多い。G2の中山記念や毎日王冠あたりはその典型だ。しかし、ドバイのG1・1800mでは、全く別世界の競馬が行われているということは推察できそうだ。

簡単に言えば、ドバイターフには前年の秋・天皇賞、ジャパンカップ、12月の香港招待レース2000mor 2400mで勝負になった馬以外は遠征する必要がない(明け4歳馬でこれらに不出走の際は日本ダービー上位クラスかG2でも鳴尾記念(3歳時)、京都記念勝ちくらいのハードルを設けるべきだろう)。

勝っても負けても国内に戻ってからの出走までは1か月以上のブランクを余儀なくされるし、特にマイラー各馬は安田記念やヴィクトリアマイルを見据えて国内でもレースが選べる時期でもある。コンディションリスクも考慮すれば、もう「行くだけ」のドバイミーティングからは卒業した方がいい。国内競馬で賞金という実と国内ファンを意識する事や、豪州等のステージを優先考慮すべきである。この認識は、日本競馬界の全体戦略という観点からも不可欠だと思う。

そして最後にドバイワールドカップに関していえば、今年2015年からは再びのダート開催。「キックバックがひどくて・・」という中で、さもありなんという結果は厳粛に受け止めるべきだろう。

世界の馬を相手に前へ行って粘り続けるしか勝ちパターンがないのであれば、そもそもこういうタイプの競走馬を育てない日本の競馬には向かないということは明快だ。それが出来る馬が現れない限り、選択肢に最初からいれないことも戦略上はOKとすら言えるだろう。

結果論で申し訳ないが、菊花賞馬でもあるエピファネイアがいないことで春の天皇賞にもたらされたデメリットに関して、具体的イメージを共有する必要があるからだ。決して「挑戦」そのものを否定するわけではないことは強く申し上げたいが、ドバイワールドカップという特殊なレースに出ると言うことに対し、それだけのリスクを背負い、きちんとした戦略と戦術を用意しているかということは、今後より高いレベルで問われていくと言うことを確認したいのである。

◆斉藤空也【22世紀の競馬を望む】
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