ばんえい能力検査◆小久保友香【大中小 馬めぐり】

第2回

若駒は、その存在だけで心がうきうきする。馬体や血統を見てはああだこうだ、競馬ならではの楽しみだ。

ばんえいの世界も同じ。サラブレッドほど血統が重要視されないとはいえ、NARのデータベースに2013年生まれのばんえい競馬登録馬が増えていくたびに、血筋を見てどんな馬か想像する。

最初のお披露目となるのが、年度開催の1週間ほど前に行われる第1回能力検査だ。今年は4月11日、184頭(うち1頭は3歳)が本番と同じレース形式で行われる試験に挑んだ。ばんえいは10コースまでしかないから、この日だけで21レース。小雨の影響でタイムの出やすい馬場となり、今年は95%が合格した。ぶち毛や粕毛、母父が純血アラブ種の馬など、今年は個性派が多い。2010、2012年にばんえい記念を勝ったニシキダイジンの仔もいる。

過去には500頭ほどが登録し、3日間かけて検査を行った時代もあった。頭数は決められているから、コンマ差で競走馬になれるか、肉馬として売られるかを争った。厩舎には必勝を願う酒やのし袋が所狭しと並んだ。生産者、関係者が集まり、スタンド前には車が並んだ。以前は能検の日は場内に車が入れたのだ。

ばん馬の生産が少なくなった今では、決められたタイム内にゴールすればほぼ合格する。最初に通らなくても後日行われる2回目、3回目にチャレンジしたっていい。

それでも、競走馬になれない馬はいる。障害を上がる意味を知らず、横にいる厩務員に「助けて」と目で訴え、その場にへたりこむ。「ここで頑張らないと、どうなるのかわかってるの」 この子になんとか伝えたくなる。

新馬の入厩は1歳秋から始まる。この頃調教を見に行くと、サラブレッドをちょっと大きくしたような馬が、重りの少ないそりを引いて、ちゃかちゃかと走り回っている。馬具をつけた姿は不自然に見えて、すぐに新馬だ、とわかる。そりをつけて訓練され、それなりの筋肉をつけて、「輓馬」らしくなるのだと思う。
この時期、重賞勝ち馬の馬主にインタビューをすると「でもね、もっといいのが1歳にいるんだわ」と言われることが多くなる。

ばんえい競馬の今年度開催は、明日18日に開幕する。25日から2歳戦もスタート。ナイター開催になってからは、昼過ぎに訪れる観光客が2歳戦を目にすることが多く、慣れない障害越えに苦しむ姿を見せてしまうことになる。これだけはなんとかならないかなぁ、と思ってしまう。
でも、これからのばん馬の未来に、声援を送ってあげてほしい。

ぜひ、帯広に来てください。

◆小久保友香【大中小 馬めぐり】
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