衣斐浩さん、ありがとう☆アロゲートの血統分析、配合における5つのポイント(後編)◆衣斐浩【配合の深淵】
ドバイワールドカップでアロゲートは期待通り素晴らしい走りを披露して優勝しました。
早速前回の続きを始めることにします。
3・2代父アンブライドルドにおけるクロスの継続
アンブライドルドは優れた競走馬であり、優れた種牡馬でした。
(現役時代ケンタッキーダービー、BCクラシックに優勝。種牡馬としてグラインドストーン、エンパイアメーカー、アンブライドルズソング等を輩出。)
配合的にもアンブライドルドは「3/4がHQアメリカ血統・1/4がフランス異系」という、特筆すべき活力を持った内容です。
アンブライドルドの血が大きく血統表に存在するならば、クロスによって強調する事は、配合上は必要かつ意味のある事と考えています。(また同時に、主要3/4の部分においても、優れた先祖の血も眠らせたままでは優れた配合とはいえません。)
アロゲートの血統を、8代9代の血統表でクロスを調べれば、祖父アンブライドルドが様々なクロスによって強調されている事が明確に理解できます。
具体的には、
Mr. Prospector - Raise a Native - Native Dancer - Polynesian - Unbreakable
--Bull Dog
--Discovery
Rough'n Tumble
--Bull Dog
--Blue Larkspur
In Reality -- War Relic
上に挙げた12の血は全て「アロゲートの父母間」においてクロスしており、その中でもアンブライドルドの箇所を中心に何重にもクロスしています。
特にMr. Prospectorのサイアーラインが5代連続してクロスしている状態は非常に強力です。
アロゲートのMr. Prospectorクロスは単なる「ミスプロの4×4」とは全く違い、クロスの重量感が違います。
私の血統の見方では、例えば(アロゲートの血統で)Raise a Nativeクロスは、「Mr.Prospectorの父として以外にも、Raise a Nativeが血統表内に存在」しています。このような形態を『クロスの継続』と呼び、より活力が強くなると考えています。
つまり、「サイアーラインが5代連続してクロス」という事は、血統表の中に、代を遡るごとにまるで”樹木が根を張るように”一つの系統が、深くなるほど広がって存在していることを意味します。
一流馬は血統にこのような特徴を必ず備えているもので、一流馬と平凡な馬との決定的な差はここにあります。
4・母内ノーザンダンサークロスの扱い方
アロゲートの母バブラー Bubblerは、Northern Dancerクロスを持っています(4×4クロス)。
しかし息子アロゲートの代ではノーザンダンサーはクロスになっていません。
いわゆる母内クロスですが、私は「クロスをさわらない」と表現しています。
これも配合のテクニックの1つと考えており、クロスによる血統表上の「緊張」をそのまま素材として生かし、次の代の配合では続けてクロスさせず「触らないでおく」のも活力を生むと考えています。
私が関わった馬ですと、天皇賞馬ヒルノダムールも母のノーザンダンサークロスを「さわらずにそのまま生かした」素晴らしい配合でした。
アロゲートの血統においては、「祖父アンブライドルド内の血を大量にクロスさせてある事」と、この「ノーザンダンサーを母内クロスのまま触っていない事」は、アロゲートの血統の良さを示す両輪といっても過言ではないほど重要だと考えています。
5・プリンスキロのサイアーラインを内包する価値
アロゲートの血統でもう一つ見逃せないのが、3代母の父であるメドウレイク Meadowlakeと、父アンブライドルズソングの3代母の父であるプリンスブレスド Prince Blessedです。
これは特別な種牡馬で、どちらもサイアーラインを遡るとプリンスキロ Princequilloに行き当たります。
いわゆるプリンスキロ直系種牡馬なのですが、配合を考える上ではかなり貴重です。
プリンスキロは北米リーディングサイアーに二度なった程の名種牡馬ですが、むしろ母の父として歴史的な活躍をしました。
よって現在、主に残っているプリンスキロの血は「母の父としてのプリンスキロ」です。
つまり、プリンスキロのクロスも「プリンスキロの娘と娘のクロス」である場合がほとんどです。
ここで、メドウレイクはじめプリンスキロ系種牡馬を血統に取り入れておくと、どのみち発生するプリンスキロのクロスが「息子と娘(を経由して発生する)クロス」になります。
私はクロスを経由するルートが「息子と息子 or 娘と娘」よりも、「息子と娘」である方が活力を生むと考えています。
アロゲートの配合の良さは、大レース向きの底力の源であるPrincequilloを、「息子と娘のクロス」というテクニックを使って更に強化した点にもあると思います。
今世界で最も注目されるスーパーホースであるアロゲートですが、血統を見ても、様々なテクニックが施され、ケタ違いの活力を持っている事が分かりました。
血統表にしても、クロスにしても、今回ご紹介した視点で細かく見直すと、意外な側面が見えてくると思いますので是非おすすめいたします。
(なお今後、私の血統の見方について知りたい事、取り上げてもらいたい題材など、読者の皆様のご意見を随時取り入れてコラムを続けていきたいと思います。グランデファームのホームページまでご意見をお寄せ下さい。)
◆衣斐浩【配合の深淵】
http://bit.ly/1GkHN43
◇競馬通信社◇
http://ktsn.jp
ドバイワールドカップでアロゲートは期待通り素晴らしい走りを披露して優勝しました。
早速前回の続きを始めることにします。
3・2代父アンブライドルドにおけるクロスの継続
アンブライドルドは優れた競走馬であり、優れた種牡馬でした。
(現役時代ケンタッキーダービー、BCクラシックに優勝。種牡馬としてグラインドストーン、エンパイアメーカー、アンブライドルズソング等を輩出。)
配合的にもアンブライドルドは「3/4がHQアメリカ血統・1/4がフランス異系」という、特筆すべき活力を持った内容です。
アンブライドルドの血が大きく血統表に存在するならば、クロスによって強調する事は、配合上は必要かつ意味のある事と考えています。(また同時に、主要3/4の部分においても、優れた先祖の血も眠らせたままでは優れた配合とはいえません。)
アロゲートの血統を、8代9代の血統表でクロスを調べれば、祖父アンブライドルドが様々なクロスによって強調されている事が明確に理解できます。
具体的には、
Mr. Prospector - Raise a Native - Native Dancer - Polynesian - Unbreakable
--Bull Dog
--Discovery
Rough'n Tumble
--Bull Dog
--Blue Larkspur
In Reality -- War Relic
上に挙げた12の血は全て「アロゲートの父母間」においてクロスしており、その中でもアンブライドルドの箇所を中心に何重にもクロスしています。
特にMr. Prospectorのサイアーラインが5代連続してクロスしている状態は非常に強力です。
アロゲートのMr. Prospectorクロスは単なる「ミスプロの4×4」とは全く違い、クロスの重量感が違います。
私の血統の見方では、例えば(アロゲートの血統で)Raise a Nativeクロスは、「Mr.Prospectorの父として以外にも、Raise a Nativeが血統表内に存在」しています。このような形態を『クロスの継続』と呼び、より活力が強くなると考えています。
つまり、「サイアーラインが5代連続してクロス」という事は、血統表の中に、代を遡るごとにまるで”樹木が根を張るように”一つの系統が、深くなるほど広がって存在していることを意味します。
一流馬は血統にこのような特徴を必ず備えているもので、一流馬と平凡な馬との決定的な差はここにあります。
4・母内ノーザンダンサークロスの扱い方
アロゲートの母バブラー Bubblerは、Northern Dancerクロスを持っています(4×4クロス)。
しかし息子アロゲートの代ではノーザンダンサーはクロスになっていません。
いわゆる母内クロスですが、私は「クロスをさわらない」と表現しています。
これも配合のテクニックの1つと考えており、クロスによる血統表上の「緊張」をそのまま素材として生かし、次の代の配合では続けてクロスさせず「触らないでおく」のも活力を生むと考えています。
私が関わった馬ですと、天皇賞馬ヒルノダムールも母のノーザンダンサークロスを「さわらずにそのまま生かした」素晴らしい配合でした。
アロゲートの血統においては、「祖父アンブライドルド内の血を大量にクロスさせてある事」と、この「ノーザンダンサーを母内クロスのまま触っていない事」は、アロゲートの血統の良さを示す両輪といっても過言ではないほど重要だと考えています。
5・プリンスキロのサイアーラインを内包する価値
アロゲートの血統でもう一つ見逃せないのが、3代母の父であるメドウレイク Meadowlakeと、父アンブライドルズソングの3代母の父であるプリンスブレスド Prince Blessedです。
これは特別な種牡馬で、どちらもサイアーラインを遡るとプリンスキロ Princequilloに行き当たります。
いわゆるプリンスキロ直系種牡馬なのですが、配合を考える上ではかなり貴重です。
プリンスキロは北米リーディングサイアーに二度なった程の名種牡馬ですが、むしろ母の父として歴史的な活躍をしました。
よって現在、主に残っているプリンスキロの血は「母の父としてのプリンスキロ」です。
つまり、プリンスキロのクロスも「プリンスキロの娘と娘のクロス」である場合がほとんどです。
ここで、メドウレイクはじめプリンスキロ系種牡馬を血統に取り入れておくと、どのみち発生するプリンスキロのクロスが「息子と娘(を経由して発生する)クロス」になります。
私はクロスを経由するルートが「息子と息子 or 娘と娘」よりも、「息子と娘」である方が活力を生むと考えています。
アロゲートの配合の良さは、大レース向きの底力の源であるPrincequilloを、「息子と娘のクロス」というテクニックを使って更に強化した点にもあると思います。
今世界で最も注目されるスーパーホースであるアロゲートですが、血統を見ても、様々なテクニックが施され、ケタ違いの活力を持っている事が分かりました。
血統表にしても、クロスにしても、今回ご紹介した視点で細かく見直すと、意外な側面が見えてくると思いますので是非おすすめいたします。
(なお今後、私の血統の見方について知りたい事、取り上げてもらいたい題材など、読者の皆様のご意見を随時取り入れてコラムを続けていきたいと思います。グランデファームのホームページまでご意見をお寄せ下さい。)
◆衣斐浩【配合の深淵】
http://bit.ly/1GkHN43
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