斎藤空也さん、ありがとう☆メンタリティー◆斉藤空也【22世紀の競馬を望む】
◆斉藤空也【22世紀の競馬を望む】
http://bit.ly/1FiPLcP
「日本人のメンタリティーの中にある短所と言えば自分に自信が持てないということ・・いや、自信を持とうとしないことだ」
アーセナル監督のアーセン・ベンゲルが名古屋グランパスの監督時代にこう触れていたことは、外国人から見た日本人における顕著な傾向の一つとして捉えられると思う。
エリザベス女王杯では後方で悠然と構えていたのが岩田騎手とルメール騎手。中団で競馬をつかみに行ったのが蛯名騎手とムーア騎手だった。
440kで前哨戦を戦い、10k落としてベスト体重に持ち込んだマリアライトが今日、この日の為に戦略過程を踏んできたことは明白であった。ジワジワと伸び脚を見せるタイプだけに戦法もマッチしている。ベストの状態で正攻法から能力を出し切って素晴らしい勝利を得た。
岩田騎手は為すべきことを行う実行者である。勝つための競馬をして届かなかったが、これはヌーヴォレコルトにとって昨年から続いている課題でもある。ひょっとしたら日本の軽い競馬よりも海外向きのタイプという仮説も検討の余地はあるだろう。
その岩田騎手を目標に追い出しをワンタイミング遅らせてきたのがルメール騎手。明らかにラスト1Fの爆発力に賭けていたように感じた。思いのほか斬れなかったのは、疲労の影響もあったのではないだろうか。ムーア騎手はインを狙ってらしくないブレーキを二度、三度と踏むことになったが、見えすぎていて驕りがあったような競馬にも見えた。
翌週のマイルCS当日は、上りの速い高速戦闘になっていたことが試された。
岩田騎手は人気薄ダノンシャークで後方待機しらしい負け方となったし、蛯名騎手は1人気イスラボニータで出遅れ。中途半端の競馬となり苦戦を強いられた。一方、出たなりの位置で中団の前をとったのがムーア(モーリス)、デムーロ(フィエロ)、サトノアラジン(ルメール)。逃げ込みを狙う戸崎騎手のレッツゴードンキを3頭が直線で飲み込んでいった。
そして、東京に舞台を移したジャパンカップ。
この日の岩田騎手はアドマイヤデウスで2番手と前に活路を求めていった。ダノンシャークにしてもこの馬にしても、勝つための可能性を考えて選択をする。G1の競馬で入着を狙うような選択をしないという潔さは見習うべき点だ。
日本人は入着の小金を拾うことを技術と詐称する人も少なくないが、その選択が競馬の価値を貶めるものであるということを認識すべきだし、競馬そのものの魅力を削ぎ、ファンを遠ざけ、競馬の衰退を招くものであることを自覚すべきだろう。
必要なものは常に勝利を目指すという形骸化したマニュアルではない。G1がいかにあるべきで、それをいかに実行してファンに見せるかという哲学こそが求められているのである。
さて、このジャパンカップでは誰もがラブリーデイの競馬であることを認識していた。それゆえに、川田騎手はもっとクールにクレバーに振る舞うメンタルが必要だった。
「動くのが早いな。これは海外騎手に食われるパターン」と馬単の裏目や抜け目を持っていた筆者は正直、ほくそ笑んだ。自分の安心の為にエネルギーを小出しに使えば、馬は本来の加速力を発揮できない。天皇賞の浜中騎手のようにじっくり左右を観察して出てくる豪胆さが川田騎手にはない。カレンミロティックやアドマイヤデウスを直線早々と射程圏に入れる必要は全くなかったのに、勝利への自我に溺れてしまった。
この瞬間をムーア(ラストインパクト)、デムーロ(サウンズオブアース)が狙い、池添騎手(ショウナンパンドラ)も割って出てくるのは必然だった。
・・騎手の世界、スポーツの世界に限らず、ビジネスの世界でも日本人はメンタルや環境適応に問題を抱えることが多いと指摘されることは多い。これらは日本人全体が教育面で受けてきた負の遺産ともいえるだろう。ただし、脱却も出来るし、改善もできる。本人がやる気さえあれば変わることが出来る。
例えばスポーツ学で指摘されている部分では、日本の向上心はプラスアルファの「数量」になりやすいと言われている。居残り練習や学校後の塾通いはこの典型だ。一方、欧米の先進教育やサッカー先進地の子供たちは瞬間の「質」になると言われている。時間と数量を増やすのではなく、普段の授業や練習の質、真剣さや集中力を高めていくことを要とする。
「日本人は80%でしか練習しない。だから本番で100%を要求されると出来るわけがなくミスとなる。我々は練習を120%でやる。だから本番で100%をこなすことが出来る」
と、以前、名監督のビエルサがこのように説明をしてくれたことがある。質の低いトレーニングをいくら積み重ねても実にならないということだ。
競馬でも「本番よりトライアルが緊張する」と語っていた現役時の安藤勝騎手や「スーパー未勝利戦こそ緊張する」と語っていた現役時の藤田騎手らの言葉は、この「質」を最高レベルで持っていたゆえといえるだろう。
そして、そのメンタリティーを支えるのは、日々の小さな「質」の積み重ねに他ならないのである。
◆斉藤空也【22世紀の競馬を望む】
http://bit.ly/1FiPLcP
◇競馬通信社◇
http://ktsn.jp
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「日本人のメンタリティーの中にある短所と言えば自分に自信が持てないということ・・いや、自信を持とうとしないことだ」
アーセナル監督のアーセン・ベンゲルが名古屋グランパスの監督時代にこう触れていたことは、外国人から見た日本人における顕著な傾向の一つとして捉えられると思う。
エリザベス女王杯では後方で悠然と構えていたのが岩田騎手とルメール騎手。中団で競馬をつかみに行ったのが蛯名騎手とムーア騎手だった。
440kで前哨戦を戦い、10k落としてベスト体重に持ち込んだマリアライトが今日、この日の為に戦略過程を踏んできたことは明白であった。ジワジワと伸び脚を見せるタイプだけに戦法もマッチしている。ベストの状態で正攻法から能力を出し切って素晴らしい勝利を得た。
岩田騎手は為すべきことを行う実行者である。勝つための競馬をして届かなかったが、これはヌーヴォレコルトにとって昨年から続いている課題でもある。ひょっとしたら日本の軽い競馬よりも海外向きのタイプという仮説も検討の余地はあるだろう。
その岩田騎手を目標に追い出しをワンタイミング遅らせてきたのがルメール騎手。明らかにラスト1Fの爆発力に賭けていたように感じた。思いのほか斬れなかったのは、疲労の影響もあったのではないだろうか。ムーア騎手はインを狙ってらしくないブレーキを二度、三度と踏むことになったが、見えすぎていて驕りがあったような競馬にも見えた。
翌週のマイルCS当日は、上りの速い高速戦闘になっていたことが試された。
岩田騎手は人気薄ダノンシャークで後方待機しらしい負け方となったし、蛯名騎手は1人気イスラボニータで出遅れ。中途半端の競馬となり苦戦を強いられた。一方、出たなりの位置で中団の前をとったのがムーア(モーリス)、デムーロ(フィエロ)、サトノアラジン(ルメール)。逃げ込みを狙う戸崎騎手のレッツゴードンキを3頭が直線で飲み込んでいった。
そして、東京に舞台を移したジャパンカップ。
この日の岩田騎手はアドマイヤデウスで2番手と前に活路を求めていった。ダノンシャークにしてもこの馬にしても、勝つための可能性を考えて選択をする。G1の競馬で入着を狙うような選択をしないという潔さは見習うべき点だ。
日本人は入着の小金を拾うことを技術と詐称する人も少なくないが、その選択が競馬の価値を貶めるものであるということを認識すべきだし、競馬そのものの魅力を削ぎ、ファンを遠ざけ、競馬の衰退を招くものであることを自覚すべきだろう。
必要なものは常に勝利を目指すという形骸化したマニュアルではない。G1がいかにあるべきで、それをいかに実行してファンに見せるかという哲学こそが求められているのである。
さて、このジャパンカップでは誰もがラブリーデイの競馬であることを認識していた。それゆえに、川田騎手はもっとクールにクレバーに振る舞うメンタルが必要だった。
「動くのが早いな。これは海外騎手に食われるパターン」と馬単の裏目や抜け目を持っていた筆者は正直、ほくそ笑んだ。自分の安心の為にエネルギーを小出しに使えば、馬は本来の加速力を発揮できない。天皇賞の浜中騎手のようにじっくり左右を観察して出てくる豪胆さが川田騎手にはない。カレンミロティックやアドマイヤデウスを直線早々と射程圏に入れる必要は全くなかったのに、勝利への自我に溺れてしまった。
この瞬間をムーア(ラストインパクト)、デムーロ(サウンズオブアース)が狙い、池添騎手(ショウナンパンドラ)も割って出てくるのは必然だった。
・・騎手の世界、スポーツの世界に限らず、ビジネスの世界でも日本人はメンタルや環境適応に問題を抱えることが多いと指摘されることは多い。これらは日本人全体が教育面で受けてきた負の遺産ともいえるだろう。ただし、脱却も出来るし、改善もできる。本人がやる気さえあれば変わることが出来る。
例えばスポーツ学で指摘されている部分では、日本の向上心はプラスアルファの「数量」になりやすいと言われている。居残り練習や学校後の塾通いはこの典型だ。一方、欧米の先進教育やサッカー先進地の子供たちは瞬間の「質」になると言われている。時間と数量を増やすのではなく、普段の授業や練習の質、真剣さや集中力を高めていくことを要とする。
「日本人は80%でしか練習しない。だから本番で100%を要求されると出来るわけがなくミスとなる。我々は練習を120%でやる。だから本番で100%をこなすことが出来る」
と、以前、名監督のビエルサがこのように説明をしてくれたことがある。質の低いトレーニングをいくら積み重ねても実にならないということだ。
競馬でも「本番よりトライアルが緊張する」と語っていた現役時の安藤勝騎手や「スーパー未勝利戦こそ緊張する」と語っていた現役時の藤田騎手らの言葉は、この「質」を最高レベルで持っていたゆえといえるだろう。
そして、そのメンタリティーを支えるのは、日々の小さな「質」の積み重ねに他ならないのである。
◆斉藤空也【22世紀の競馬を望む】
http://bit.ly/1FiPLcP
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