合田さん、今回は大変でしたね☆ドバイワールドC生中継の舞台裏◆合田直弘【Horse Racing Fanatic】
◆合田直弘【Horse Racing Fanatic】
http://bit.ly/17MDPVA
Horse Racing Fanatic Vol.2
ドバイワールドC生中継を何とか無事にやり終えて、帰国の途についている。
何とか無事に…………..、結果的には。
海外からの生中継というのは、どれだけ周到に準備を整えていても、何かしら予期せぬアクシデントが起きるものだ。民放キー局に勤務していた頃を含めれば、もう30年以上この仕事に携わっているので、少々のトラブルには驚かなくなっているし、それになりに対処する手段も持ち合わせてはいるのだが。
今回も2つほど、想定していなかった事態が生じた。
ひと口に生中継と言っても、その規模によってシステムや装備は千差万別で、必要となる準備も様々だ。グリーンチャンネルの中継というのは、無駄を省けるほど省いた簡素なもので、例えば、現地で独自の映像作りは行わない。日本の皆様に映像としてお届けするのは、現地の放送局が制作した「国際映像」と言われているもので、ここに、現地のブースから出す音声と、東京のスタジオから出す映像と音声をミックスしての放送となっている。
このパターンは、サテライトチャンネルが増えた昨今の方が、かつてよりは一般化していて、MLB(メジャーリーグベースボール)をはじめとしたスポーツ中継は、このスタイルで放送している番組が少なくない。
そしてグリーンチャンネルの場合、現地コメンタリーブースから出す音声は、サテライトを経由するわけではなく、電話回線を使って送っている。
今年の例で言えば、現地ブースに電話回線を2本引き込み、1本を私の解説を送る回線とし、もう1本を同行していたグリーンチャンネルのプロデューサーT氏と東京にあるスタジオサブとの間の打合せ回線として使用するのだ。
ブースにはこれ以外に、私が国際映像を観るためのモニター、国際放送のコメンタリーを聴くための音声分岐などを設置。更にインターネット回線を引き込んで、ブースと東京のスタジオサブをスカイプで結ぶ。スカイプを通じて、現地にいる私の顔が東京のスタジオに送られ、そしてグリーンチャンネルで放送されている画像を私が現地で見ることが出来る、という仕組みが出来上がる。
ちなみに私は、番組では解説を行うだけではなく、ここまで記した機材だの回線だの、ブースに設置するための技術的コーディメートも引き受けていることがほとんどである。
ドバイの中継も、かつてのナドアルシバからメイダンに競馬場が変わり、ブースに標準装備されている機器が増え、随分とトラブルは減った。しかしそれでも、日本人は日本人らくし、今年も放送の2日前にはセッティングを終え、前日には機材テストを行い、本番当日を迎えた。
メイダンのスタンド5階にある報道用フロアのテラスには、各国の放送局が横に並んでおり、グリーンチャンネルの隣は、今年はフランスの競馬チャンネル「エキディア」だった。
そのエキディアが、放送当日になって慌てていた。どうやら音声機材に不具合があるようで、放送開始まで1時間を切ってなお、ああでもない、こうでもないと、トラブルの対処に追われていた。
それを横目で見つつ、「あいつら、前日は遊んでいて、テストをしていなかったものね」と、対岸の火事を高見から見物していたのだが。
放送開始を前にして、当方に起きた最初のトラブルが、電話機に接続するヘッドセットとマイクロフォンの不具合だった。
電話回線で解説を届けると言っても、片手に持った受話器を耳にあてて長時間喋るのはなかなかに難儀で、片手が塞がることも資料を繰りながらの解説には支障をきたすため、マイクロフォンがついたヘッドセットを電話機にコネクトし、そのヘッドセットを頭に装着して喋るのが通例となっている。
その、マイクロフォン付きのヘッドセットが、テストの時には何も問題がなかったのに、当日使ってみるとひどいノイズが入ったのだ。
分解修理を試みるもうまく行かず、新たなヘッドセットを調達する時間的余裕はなく、放送をご覧になった方はおわかりと思うが、ブースの私は片手に持った受話器を耳にあてての中継となった。
解説者としては、大層不便である。不便ではあるが、解説を送る上では大きな支障はなく、このままなんとか放送終了まで乗り切りましょう、ということになった。
そして、致命傷になりかねないトラブルが発生したのが、放送開始直前だった。なんと、2本ある電話回線の1つが、突然不通になってしまったのである。具体的に言えば、私の解説を送るために用意していた回線がダウン。その電話機から分岐していたインターネット回線も同時に落ちたため、スカイプも見られなくなってしまったのだ。
これには困った。不具合が、ブースに設置した放送機器のどこかにあったのならば、まだ対処のしようがあったのだが、原因が電話回線にあるとすれば、これを修復しようとすると話はおおごとになる。
ナドアルシバ時代に、実際に1度あったことなのだが、競馬場全体の通話を司るコントロールルームから、地域の電話会社も巻き込んだ、大騒ぎに発展したのだ。幸いにしてこの時、トラブルが発生したのは前日のリハーサルセッションで、その後丸24時間かけて復旧作業を行い、事無きを得た。
だが今回は、放送開始まであと何分という段階で、電話回線がシャットダウンしたのである。
ここからは、Tプロデューサーと私の二人による突貫工事が始まった。幸いにして打ち合わせ用の回線は生きていたので、これを電話機とともにテラスの放送用デスクに移動。急遽これを解説者用の回線とした上で、そこにインターネット回線を突っ込み、スカイプを開通させた時には、既に番組のオープニングが流れ始めるタイミングだった。
ちなみにT氏は、自らの携帯電話でスタジオサブを呼び出し、これを打ち合わせ回線として、放送をスタートさせたのである。
ふーっと大きく息を突きながらしゃべり始めた時、隣のエキディアスタッフが、私たちに対岸の火事を見るような視線を投げ掛けていたように感じたのは、私の考えすぎだろうか?!
そんな形で送り出した番組だ。お見苦しいところが多少なりともあったとしても、平にご容赦いただきたいと願うばかりである。
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◇競馬通信社◇
http://ktsn.jp
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ドバイワールドC生中継を何とか無事にやり終えて、帰国の途についている。
何とか無事に…………..、結果的には。
海外からの生中継というのは、どれだけ周到に準備を整えていても、何かしら予期せぬアクシデントが起きるものだ。民放キー局に勤務していた頃を含めれば、もう30年以上この仕事に携わっているので、少々のトラブルには驚かなくなっているし、それになりに対処する手段も持ち合わせてはいるのだが。
今回も2つほど、想定していなかった事態が生じた。
ひと口に生中継と言っても、その規模によってシステムや装備は千差万別で、必要となる準備も様々だ。グリーンチャンネルの中継というのは、無駄を省けるほど省いた簡素なもので、例えば、現地で独自の映像作りは行わない。日本の皆様に映像としてお届けするのは、現地の放送局が制作した「国際映像」と言われているもので、ここに、現地のブースから出す音声と、東京のスタジオから出す映像と音声をミックスしての放送となっている。
このパターンは、サテライトチャンネルが増えた昨今の方が、かつてよりは一般化していて、MLB(メジャーリーグベースボール)をはじめとしたスポーツ中継は、このスタイルで放送している番組が少なくない。
そしてグリーンチャンネルの場合、現地コメンタリーブースから出す音声は、サテライトを経由するわけではなく、電話回線を使って送っている。
今年の例で言えば、現地ブースに電話回線を2本引き込み、1本を私の解説を送る回線とし、もう1本を同行していたグリーンチャンネルのプロデューサーT氏と東京にあるスタジオサブとの間の打合せ回線として使用するのだ。
ブースにはこれ以外に、私が国際映像を観るためのモニター、国際放送のコメンタリーを聴くための音声分岐などを設置。更にインターネット回線を引き込んで、ブースと東京のスタジオサブをスカイプで結ぶ。スカイプを通じて、現地にいる私の顔が東京のスタジオに送られ、そしてグリーンチャンネルで放送されている画像を私が現地で見ることが出来る、という仕組みが出来上がる。
ちなみに私は、番組では解説を行うだけではなく、ここまで記した機材だの回線だの、ブースに設置するための技術的コーディメートも引き受けていることがほとんどである。
ドバイの中継も、かつてのナドアルシバからメイダンに競馬場が変わり、ブースに標準装備されている機器が増え、随分とトラブルは減った。しかしそれでも、日本人は日本人らくし、今年も放送の2日前にはセッティングを終え、前日には機材テストを行い、本番当日を迎えた。
メイダンのスタンド5階にある報道用フロアのテラスには、各国の放送局が横に並んでおり、グリーンチャンネルの隣は、今年はフランスの競馬チャンネル「エキディア」だった。
そのエキディアが、放送当日になって慌てていた。どうやら音声機材に不具合があるようで、放送開始まで1時間を切ってなお、ああでもない、こうでもないと、トラブルの対処に追われていた。
それを横目で見つつ、「あいつら、前日は遊んでいて、テストをしていなかったものね」と、対岸の火事を高見から見物していたのだが。
放送開始を前にして、当方に起きた最初のトラブルが、電話機に接続するヘッドセットとマイクロフォンの不具合だった。
電話回線で解説を届けると言っても、片手に持った受話器を耳にあてて長時間喋るのはなかなかに難儀で、片手が塞がることも資料を繰りながらの解説には支障をきたすため、マイクロフォンがついたヘッドセットを電話機にコネクトし、そのヘッドセットを頭に装着して喋るのが通例となっている。
その、マイクロフォン付きのヘッドセットが、テストの時には何も問題がなかったのに、当日使ってみるとひどいノイズが入ったのだ。
分解修理を試みるもうまく行かず、新たなヘッドセットを調達する時間的余裕はなく、放送をご覧になった方はおわかりと思うが、ブースの私は片手に持った受話器を耳にあてての中継となった。
解説者としては、大層不便である。不便ではあるが、解説を送る上では大きな支障はなく、このままなんとか放送終了まで乗り切りましょう、ということになった。
そして、致命傷になりかねないトラブルが発生したのが、放送開始直前だった。なんと、2本ある電話回線の1つが、突然不通になってしまったのである。具体的に言えば、私の解説を送るために用意していた回線がダウン。その電話機から分岐していたインターネット回線も同時に落ちたため、スカイプも見られなくなってしまったのだ。
これには困った。不具合が、ブースに設置した放送機器のどこかにあったのならば、まだ対処のしようがあったのだが、原因が電話回線にあるとすれば、これを修復しようとすると話はおおごとになる。
ナドアルシバ時代に、実際に1度あったことなのだが、競馬場全体の通話を司るコントロールルームから、地域の電話会社も巻き込んだ、大騒ぎに発展したのだ。幸いにしてこの時、トラブルが発生したのは前日のリハーサルセッションで、その後丸24時間かけて復旧作業を行い、事無きを得た。
だが今回は、放送開始まであと何分という段階で、電話回線がシャットダウンしたのである。
ここからは、Tプロデューサーと私の二人による突貫工事が始まった。幸いにして打ち合わせ用の回線は生きていたので、これを電話機とともにテラスの放送用デスクに移動。急遽これを解説者用の回線とした上で、そこにインターネット回線を突っ込み、スカイプを開通させた時には、既に番組のオープニングが流れ始めるタイミングだった。
ちなみにT氏は、自らの携帯電話でスタジオサブを呼び出し、これを打ち合わせ回線として、放送をスタートさせたのである。
ふーっと大きく息を突きながらしゃべり始めた時、隣のエキディアスタッフが、私たちに対岸の火事を見るような視線を投げ掛けていたように感じたのは、私の考えすぎだろうか?!
そんな形で送り出した番組だ。お見苦しいところが多少なりともあったとしても、平にご容赦いただきたいと願うばかりである。
◆合田直弘【Horse Racing Fanatic】
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